スイングイップスに悩んでいる人に捧げる

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34歳でゴルフを始めた。

2年くらいで100を切れた。

割りと器用なタイプなので、

”やり始め”のレベルは高い方だ。

 

ある日、本土から来沖した某会社の方とラウンドした時の話。

彼がラウンド中に一言僕へ言った。

「オーバースイング気味だね」

その時は「え?そうですか?」くらいにしか受け止めていなかった。

しかし、後のプレーにおいて、トップからダウンスイングに入る際に変な違和感を感じていた。

追々分かることなのだが、その一言が自分の潜在的な部分、

つまり、自分で制御しようもない超内的世界で癌細胞のように蠢いていた。

それからしばらくして、あるコンペに参加した。

スタートからやはり前回感じた違和感がある。

宜野座カントリーのOUT6番のパー3で事件が起こった。

自分の打つ番になり、いつものルーティンでアドレスに入り、

バックスイングを取る。

ちょうどトップの位置からダウンスイングに入る時にそれは起こった。

「クラブが・・・下りない・・・」

そう、体が完全に硬直してクラブが下りない、つまり球を打てないのだ。

顕在的な意識で下ろそうとする自分を自分の潜在的な何かがブレーキをかけ、

クラブを持ち上げたままグラグラしている。

一緒にラウンドしている周りの人達はそれを見て一斉に爆笑した。

「なーにやってる!」

「遠慮しないで打っていいよ!」

ティーインググラウンドが冷やかしの声でいっぱいだ。

しかし、自分の体が言うことを聞かない。

生まれたての子牛のようになって1分近く固まっていた。

次第に周りは黙り込み、

なにかしら異常な状態になっていることを理解したようだ。

結局、動画のバークレーのように変な打ち方でその場を過ごした。

・・・僕はこのような地獄の時期を8年過ごした。

もちろん何度も辞めようと思ったが、どうにか辞めないで現在に至っている。

今はこの8年間が自分の中では宝物になっているので、

いつかその話をどこかに残したいと考えていた。

イップスに陥ると周りが心配してくれる。

そして様々なアドバイスをくれる。

「下半身を意識したほうが良い」

「腕を脱力して肩を回す意識が良い」

「テイクバックを取らずダウンスイングだけを練習したほうが良い」

「肴は炙ったイカで良い」

全てアドバイスとしては正解である。

実際、そのようなアドバイスが最終的にはイップス解消に役立った。

しかし、イップスの状態にある時は、

それが理屈で解っていてもできないのである。

体が言うことを聞かないのである。

練習場では普通に打てるのに、

本番になるとやはり硬直してしまうのである。

「力抜けよー」

「あまり結果を意識するなよー」

そう言われてもどうしようもないのである。

やがてこのアドバイス自体が苦痛になっていく。

何度かクラブを放り投げ「もうゴルフ辞める!」と宣言したこともある。

なのに、なぜ辞めなかったのか。

一言で言うと逃げたくなかったということになる。

”今までなんでも器用にできる自分”

が止まっている球すら打てないという状況に陥ったとき、

その状況から逃げるのは簡単だが、

自分にこういう現象が起きるということは、

これを解消すれば何か得るものがあるんじゃないか?

と考えるようになった。

厳密に言うと、そう考えるように努力をすることから始めた。

それ以来、深層心理をどうコントロールするか、

というより深層心理をどう誤魔化すかだけを考えてラウンドした。

この8年は100を切ることはなかった。

いつもひどいスコアだったが、振れることに感謝するようにした。

脱力しようと思ってもできなかったり、

逆に力を最大限に入れてみたり、

とにかく試行錯誤の繰り返しだった。

左打ちを試したこともあった。

やはり器用なんで普通に打てるし、

恐らく人が見たら普通に左打ちに見えると思う。

ただ、これも逃げっぽい気がして辞めた。(笑)

 

肝心な”どうやって克服したか”は正直何が奏功したかは自分でもわからない。

上記のアドバイスを含めあまりにも色々なことをやってきたから。

ただ、今イップスに悩んでいる人の気持ちは良くわかるので、

自分なりにいくつか「これかな?」というものを挙げることにする。

1・自分に期待しない。

やってみると結構難しいです。OBを打っても良しと思うのは時間がかかります。

そもそもイップスになる人はそう考えるのは難しいと思います。

2・アドレスに入ると1個だけのことに集中する。

無心が良いんでしょうが、それは僕には無理だった。

逆にいくつも考えると体をうまく制御できない。

僕はインパクトの瞬間、頭を右後方に持っていくことだけを考えている。

下半身が遅れようが、突っ込もうが、インパクトの瞬間に無理やり頭を後ろに持っていくと(イメージで言えばインパクトの際に右肩が打ち出す方向に流れてきたときその右肩に顎をぶつける感覚)インパクト時点でうまく遠心力が効く。

打ち方が不格好でも勢いのあるボールが飛んでいくのでストレスが溜まらない。

インパクトを意識するのは本来よくないことではあるが、

潜在意識がテイクバックにこだわっている状態なので、そこの支配からちょっとずつ開放されたかも知れない。

別のことを考えることもあるが、とにかく1個だけというのを決まりにしている。

以上の2つくらいかと思う。

 

今はごく稀にラウンド中に近い症状が顔を出すことがあるが、

完治したと言っても良いと思う。

 

このイップスを経験したおかげで副産物的にというのか、

こうならないと絶対に自分では気付かないものに気付けた。

 

以前は不器用な人を見ると

「なぜこんな簡単なことができないのか?」

と思ったものである。

同じくメンタルの疾患を持ったり、なにかしらのコンプレックスで悩んでいる人をみても、「本人の気の持ちよう」と本気で思っていた人間だったのだが、

それがなくなった。

理解しても体が言うことを聞かないという苦しさを自分自身で味わったからだと思う。

なので、鬱の人がいてもなんのアドバイスもしない。

それを受け入れろとも言わない。

ただこちらがその人を受け入れ、肯定するだけで良い。

話を聞くだけで良い。

こういった病気と遊びのゴルフを一緒にするのは失礼かも知れないが、

自分を信用できなくなっている人間に対する善意のアドバイスは刃に近いときもある。

自分を受け入れられない人間が人の意見を受け入れるはずがない。

それができていたらそもそも健康なんだと思う。

格好つけるみたいだが、その感覚を体感したことで、別人のような思考回路がひとつ増えた。

苦しみを理解したかったわけではないが、図らずもこういう苦しみがあるということを体感できたのは貴重だったと思う。

そういった意味でゴルフには感謝している。

辞めないで良かった。